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    現況報告、およびキーボードじゃないとできないこと、でもピアノじゃないがピアノに聴かせること - 2007.05.17 Thu,12:22

    ジキル環境Musical“ジキル&ハイド”の公演は、今日現在名古屋の中日劇場で明日の初日を前に最終リハーサル中だけど、自分が座るキーボード1廻りはこんな環境です。

    舞台上手の裏には、僕と金管の3人(ホルン,トランペット,トランペット)そして、ベース(コントラバスとエレキベース)とドラムスとティンパニーを含む多数の打楽器、そして指揮者の8人が。

    舞台下手の裏の方には、弦楽器の4人(ヴァイオリン1&2,ヴィオラ,チェロ)と木管楽器の4人(フルート,オーボー&イングリッシュホルン,クラリネット1,バスクラリネット&サックス)そしてキーボード2と3の2人の計10人がいます。

    写真をクリックしてもらうと少し大きくなるのでわかりますが、譜面台がとても特徴的なのが今回の公演。

    舞台の裏の基本的に客席から見えないところで弾いている訳だけど、装置の移動によっては裏で弾いているオーケストラが客席からも見えるときがあるので、譜面灯からの光が不必要に漏れないように譜面台が細工をされて上部や左右が帽子のつばのように覆われているのです。

    ゆえに、このサイズだと、横長に楽譜を製本できないから譜めくりは熟練を要しています(爆)

    大阪公演での自分の位置は、指揮者の目の前、ほぼ客席側を向いていたが、名古屋の劇場ではスペースがあまりなく、上手側舞台袖を向いて客席からすると横を向いて弾いているから、より光が漏れやすいということで、自分の譜面台だけ、右側にはこの公演からより大きな目隠しがオプションで付け加えられた。

    キーボードの左横に斜めになっているスピーカーが自分の音専用のモニター。
    右側の高い位置に少し見えている小さなスピーカーが他の楽器と歌や台詞を聴くもの。

    指揮者は僕の譜面台の先に立っている。

    音色の切り替えは、マニピュレイターの人(音色を設定する専門の人)にあらかじめ、曲で使われる音色が順番に並べられてプリセットされていて、基本的にそれ専用のペダルのスイッチで一度踏めば次の音に切り替わる。

    ダンパーペダル(音を延ばす)を右足で踏んでいる時に切り替えなくては行けない時などは指によってボタンで切り替えるときもある。

    だから譜面をみてピアノ練習して、音符を拾うことと、ストーリーを理解し、指揮者を観て音楽的なテンポや仕掛けを理解すること、そして廻りの共演者(まったく視界に入ってない人たちがほとんどではあるが)たちの音を同時に把握することに加えて、「いつどんなタイミングで音色を切り替えるか」ということが重要な作業になる。

    必ずしも、切り替え時に数小節の「休み」があるとは限らず、休みが一拍しかなかったり、それさえもないときがあったりするから、その操作は機械への理解と熟練が必要なのです。

    しかもこれは今回の音源の特徴で、音が鳴っているあいだに、プログラムチェンジをすると、音がぶつっと切れてしまうので、長い音の後わずかなタイミングで次の音に変える時は実に神経をつかうのだ。
    僕が自分でよく使うRoland社の音源は前の音が鳴っていても次の音に切り替えてもその次の音の打鍵からチェンジするし、前の音のキーを鳴らしっぱなしにするとそれも生きていたりするからそれだったらもっと楽なんだけどな。 

    装備の中には一応ヴォリュームペダルもあるけれども、自分はほとんど鍵盤やハープの音色なので、基本的にはそれを頻繁に操作することはない。
    強弱は鍵盤でつけるべき音色だからね。

    それはたぶん、キーボードの2や3の人たちが主に担当しているストリングスやアコーディオン、そして僕も数回だけど弾くことになるいわゆる他の楽器の「代わり」ではなく、キーボードの面目躍如たる、いわゆる電子音を演奏するときには必要なアイテム。

    ただ、クレッシェンドやディミニュエンドといった表情の増減で使うことののみならず、自分が使うときは、突然カットオフしないといけないときがあり、鍵盤から手を離しても残響が残る音色のセッティングがあり、そういうときは、ヴォリュームペダルで一気に音を止める必要がある。

    オルガンやエレクトーン出身の人は習慣から、ヴォリュームペダルは右足で踏む(ゆえにダンパーペダルは左足)人が多いが、自分はピアノ弾きなので、左足でそれを踏んで、右足はダンパーペダルとプログラムチェンジのスイッチペダルという守備位置にペダルを床に配置している。

    ピアノの音色も一種類ではなく、その場面で要求される表情の必要性から何種類も用意されていて、その特性を考える必要がある。

    そして単に「生のピアノを置くスペースがないから電子楽器で弾いている」というのではなく、キーボードならではのセッティングがある。

    その一つが複数の音がレイヤーされて重なってでているような音だ。

    ハープとピアノとか、ハープシコードと電子ピアノとか、それらがいつも同時に鳴る訳ではなく、ベロシティ・スウィッチといって、ある程度強く弾いたりするときにのみ、その音色が顔を出すものがあったり、そういうときは考えて打鍵の強さをかえる必要がある。

    あとこういう楽器の得意技にスプリットという機能がある。

    それはもっともシンプルに使う場合は、この日の演奏でもやったけど、文字通り鍵盤の音域によって違う音色がセッティングされているパッチをつくって、右手はピアノ左手はベースにして弾くというような使い方だ。

    しかし今回はそういう用途のみではない。

    自分でこの手の仕事でキーボードをマニピュレートするときにも良くやるやり方だが、瞬時に音色を変えなければいけないときに、スウィッチペダルや操作板のボタンを押す時間がない時、その辺のフレーズのひとくだりで、使っていない、たとえば極端に高いとか、低い音域に別の音色をアサインしておけば、弾く音域を移動すればスイッチの切り替えなしに別の音色に切り替わる訳だ。

    だから、ピアノを弾く感覚、つまり「書いてある譜面の音の高さ」と「実際に鳴っている音の高さ」はこういう楽器を弾く場合まったく一致してないときがある。

    今回は、二幕の最後の方で、ピアノの音と、ハープシコードの音が中断なしに、めまぐるしく変わる時に、実際に鍵盤上では、右手は二小節ごとに、2オクターブ跳躍して移動を繰り返していて音色は変わっても、聞こえる「音域」は常に同じ音域のモティーフが鳴っているのです。

    まだまだこういう楽器には生の楽器にはできない設定ができます。

    これはピアノと同じ鍵盤に見えているけど、本当の顔はコンピュータのキーボードと同じなのであるからして、今回はそういうことをしてないけど、ドレミファソの順番に音がならないようにすることも簡単にできるし、それを使って、生のピアノでは絶対にありえないように実にある種のモティーフを簡単に弾くように設定することもできる訳だ。

    たとえば、同じ音の速い反復というのは鍵盤楽器のもっとも苦手なことだけど、それを隣あわさった鍵盤に同じ高さの音を設定しておけば、トリルみたいにして弾けるし、ものすごく跳躍する複雑な音の並びがもし数種類なら、それを隣同士の鍵盤にならべちゃえばそのまま連続して弾けば誰でもヴィルトーゾになれる(爆)し、重音の連続だって、一つの鍵盤にオクターブだろうが和音だろうがまとめて鳴らせるから同様に簡単に指一本で鮮やかに弾くことは可能です(爆)

    もう一つ、実際これは、かつてそういう設定をされていた時(ちなみに2002年にマシュー・ボーンの振り付けによる“ザ・カーマン”で使われていたキーボードの設定)に驚愕して納得したことがある。

    普通は鍵盤を「下に降ろす」から音が出る訳でしょう?

    それとは逆に、鍵盤を底まで降ろした状態から手を離して「上に戻る時」に発音するように設定することだってできる訳ですよ(爆)

    なんでそんなことが必要だったかというと、前述のように鍵盤楽器は、弦楽器のように弓を引っ張る動作、通常「下げ弓」とか「ダウンボウ」とかいうのと、押しあげる動作、通常「上げ弓」とか「アップボウ」とかいうの往復で、同じ音における細かいトレモロを演奏できる訳ですが、通常の鍵盤楽器ではそれを再現しようとしても、打鍵というのは、弦楽器で言う「下げ弓」しかできないわけだから、それをいくら訓練して指を変えて連打しても単音ならそこそこ名人芸でできたとしても、和音なら同じ指が打鍵するわけでおのずと限界があるわけです。

    だから器楽の協奏曲やオペラアリアなどの、本来数十人のオーケストラで演奏される伴奏を二本しかない手で(爆)ピアノでするときに、弦楽器のトレモロを再現する時は、ピアノならではの「ばらけたトレモロ」で「それらしく聞こえる」ように弾くのが普通のやり方です。

    それで、コンピュータである電子キーボードに於いては、前述のように鍵盤を下に押した時と離した時におのおの発音させてしまえば、まさに弦楽器の、弓を一往復したときと同じことができる訳です。

    その設定がされていたときは、ストリングスのアタックの強い音だったけど、それでまさに「本当のトレモロ」が実に楽に演奏できた時に、肉体的な演奏技術よいうより、通常、鉛筆で書くのではなく、コンピュータの能力のおかげでなしえている様々なこと(表計算や譜面、CGなど)と同様、実に「使える道具だな」と、ピアノを演奏することとは違う喜びを感じるものなのです。

    でもね、結局様々な音色へ「個別」のデッサン力がないと、その楽器らしく聞こえないものなのではあります。

    だから、生のピアノだって、様々な楽器になりかわって弾くイマジネーションが常に必要だとは思うけど、実際にピアノの音じゃない音を鳴らしている時の電子楽器は、ピアノを弾くように弾いては全くおかしなことになることもあるし、指の訓練をしていれば弾けるようになると素人は考えがちだけどそういうわけではないことは両方とも同じということですね。

    それと、この演奏会の時に評価されたことと同じことを今回も言ってくれた共演者がいたので、実に光栄に思ったのだけど、一般的には生の楽器ほど個性的な音色の違いは識別されないように思われるけど、そうでもないところには、やっぱり「演奏すること」への意識は、常にピアノと同じように持っていないとだめなので、どんなにマニピュレイターによってすばらしい設定がしてあっても、プレイヤーが仕事、つまり演奏をするのはコンピュータの機能によっかかるだけでできるということではありませんね。


    バックアップのキーボード右の写真は、下手の奥にひっそりとたたずむ今のところ誰にも弾かれていない緊急用の予備のキーボード。

    もし演奏している三台のキーボードのどれかがトラブルで演奏不能に陥ったらそいつはここまで走って来て、音色をダウンロードし、この場で演奏に復帰するものです。

    いつだってトラブルは起きる可能性があるからとても必要なことだけど、10年以上前によくMusicalの仕事で自分の楽器もちこんで参加していた時はこんなサポートはしてくれなかったから現在はとても危機管理が進んだということで頼もしく思います。

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    ● COMMENT ●

    補足

    大事なことを思い出しました。

    キーボードで仕事をし始めた最初の頃、今参加しているようなショウビジネスの現場で操作や原理を確かに覚えていったのですが、演奏だけでなく、ローランドという世界に名だたるメーカーから直接仕事をいただくおりなんか、たとえば、こういうことをやったりするとき
    http://juninho.blog16.fc2.com/blog-entry-702.html)なんかに、その関係でお会いする人たちに、「今日はキーボーディストみたいにみえますが、実はクラシックのピアニストでいらっしゃるんです」とか、紹介してくださる会社の人が、ある意味気を使って紹介してくれることが多いし、自分も「今日は裏の顔」みたいなふりをするのが習慣だった。

    なにせキャリアはピアノにくらべて少ないし、本当にキーボードだけでお仕事をしていらっしゃる専門の人に比べたら、わかってないことだって多いとおもったから、どうしても初めての頃は「クラシックの人にしては珍しくこういうことにちょっと詳しい」という枕詞を意識していたことは事実。

    でも、仕事を繰り返している間に、それは、その仕事をくださっている会社および、電子楽器そのものに大して失礼だし、全部通暁してなくたって(そりゃピアニストだって、楽器のこと知らないで仕事しているひとは無数にいる)、その現場で必要なことを実践し、それでギャラをもらっているわけで、それこそ、ピアノを弾いて得た収入なんかより割合は多かった年だってあるし、たしかに収入が多いのが本業というのは税務上のことだけであって自分の意識は別問題だとはいえ、'I am a Keyboardist'と誇りをもって言うこと(実際に仕事上は誇りをもってしているわけで)は必要なことだと十数年前から思うようになった。

    ジャンルをまたいでいたりすると、なんか「色物の音楽家」みたいに思われるのではないかとか、それは実にくだらないことであって、分類するのは他人(生のピアノを作っていたり調律している人たちは、決してよくは思わないとは思うけど)であって自分はどうでもいいことだ。

    確かに

    たしかに作品は初めてだけど、もう一週間以上弾いたらいくら何でも慣れました。

    ゴシュ子さんをはじめとする僕の知り合いとは電子楽器を通じた会話をしたことがないから僕のこういう現場は「裏の顔」というわけで、僕が普段クラシックの仕事をしていることに比べたら、相当アウェイの試合みたいなスリルのある気の使い方をしていると思われているかもしれませんね。

    でも、この手の楽器の機能を使いこなすことは、もう80年代後半から仕事でやってるのだし、最初の頃ならともかく、皆さんが普段手慣れた仕事をするのと同じことで、もう若くないし、これがまだキャリアがなければおどおどするのだろうけど、あたりまえのことをあたりまえにやってるだけのことで、作品に対してもとてもシンパシーを感じているし、人間関係も実に良好な関係の仕事(今月はこのミュージカルと平行して三つの進行中仕事を地方でしているがすべて)なので、このまま何年も家に帰りたくないくらいの気分です(爆)

    住所不定ということにすごく憧れます(爆)

    御成功お祈りしています

    その機能を使いこなしたり、タイミングを計ったり 大変。おまけに、足も動員!!神経使いますね。

    きっと、言葉を選ぶように、音も多彩なのでしょうね。楽しんで楽しんで弾いてくださいね。

    また、ご報告待っています。ここから音を想像して楽しんでいます。


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    (新しい記事には極力付けるようにしていますが、全記事検索にはほど遠い状態ではあります。
    少しずつ古い記事にもtagを付けていく所存であります。
    検索しやすいように日本語でtagを付けていましたが、URLにすると、メールなどで、日本語の部分を認識してくれないことが判りましたので、今は日本語で書いた方が良いと思われる地名や固有名詞以外のものは英語に書き直していますが、勿論一辺には出来ないので同じ言葉が日本語と英語で別れているという妙な事になっていますが、追々統一したいと思います。)

    My Works

    iTunes Storeで配信されている、僕の作曲した作品です。
    両方とも宮沢賢治の物語を元に「語りと音楽」による編成で作曲されています。
    “どんぐりと山猫”については、ここ
    “セロ弾きのゴーシュ”についてはここ
    に補足説明があります。
    これらの作品の生演奏のオファーも随時ここで受け付けています。

    二つの作品のうち、“セロ弾きのゴーシュ”はこの真下の欄にあるようにCDとしてもリリースしました。

    お断り

    commentやtrackbackは記事そのものに直接関係ない(記事が取り上げていることに関連があったにせよ)と僕が判断したものは断りなしに削除させていただきますし、頻発する迷惑投稿を拒否するために認証後反映する時もありますのでご容赦。

    PhotoはものによってClickすると写真共有サイトや、そのまま大きいサイズで見ることができます。

    様々なテーマについて投稿することにより将来的には一種の白石准の百科事典のような「作品」に成長していくことを期待しています。

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