ドビュッシーの管弦楽のための「映像」は情景だけでなく、香りも漂う音楽に感じます - 2012.09.07 Fri,07:21

あまりに、音楽のネタが最近少ないので、たまには音楽の話題を(爆)
本日サントリーホールで弾く、新日本フィルハーモニーのサントリーホールでの定期演奏会(新日本フィルハーモニーの該当ページはここ。興味のある人はまだチケットはあるようです。19:15開演です。)で、僕は写真のCelestaを弾く。
件名にあるとおり、今日弾くのはドビュッシーの「映像」だ。
「映像」というと、ピアノのための二つの(各々三曲で出来ているが)作品がピアノ弾きの間では有名なのだが、この管弦楽のための曲は前から好きだったのだが、弾く機会が無かったからものすごく興奮しています。
周りで一緒に演奏している知り合いに訊いても、今日二曲目に弾かれるイベリアという曲だけ吹いたけど、全曲は初めてだと言っていた(だから、渡された時点で、僕の弾くパート譜には、前弾いた人の書き込みのある曲と、まったく書き込みのない曲があったのだ。)し、全曲弾いた事のある別のベテランの人も別のオーケストラだったから10年ぶりだとか、つまり、こんなに素晴らしい、ドビュッシーにとってもたぶん相当重要な位置を占める作品もそれほど有名な他の作品(「海」とか「牧神の午後への前奏曲」とか)に比べれば演奏頻度は多くないと言う事だ。
曲について説明のあるページは、ここと、そして、ここのものにlinkをはっておきます。
それを見ると、初演当時は、賛否両論だったんだね。
その時代の「現代音楽」な訳だから、今じゃ普通に心地よい音楽に聞こえるけど、Debussyが試したそれまでにない試みとかには、否定的な人も多かったのでしょう。
だから批評家の言う事は正しい場合ももちろんあるけど、近視眼的なものも多いというのは歴史が証明しているわけだ。
大まかに言うと、上のリンク先のページの説明にもあるとおり、この三曲は、最初の"ジーグ"がイギリス(スコットランド)、"イベリア"がその名の通り、スペイン、そして最後の"春のロンド"がフランスという、「世界旅行」みたいな音楽です。
ラベルやドビュッシーの音楽は、その音楽から景色が良く浮かぶ種のものだと僕は思いますが、この曲は、どうだろうな、よくケーブルテレビでチャンネルを合わせるNationalGeographicあたりの膨大なコレクションから自然の動画と組み合わせて見せて貰いたいとも思っちゃうほど、三曲の個性がそれぞれ違う景色が見えます。
最初のジーグは、最初titleが「悲しきジーグ」という風に着いていたらしく、途中では凄く盛り上がるけど、音楽の冒頭には哀愁があり、凄く晴れた景色というよりいは、どこか曇っているあの国のポピュラーな天気を思わせるような色合いを感じます。
そしてイベリアは三曲からできているけど、スペインの路地の活き活きとした喧噪や、お祭りの盛り上がり、そして、まさに、題名そのものが「夜の香り」というやつが二曲目にあって、Celestaが「夜の楽器」に聞こえる(夜のお菓子うなぎパイじゃないが(爆))、なんとも言えない、空気感というか、ぞくぞくします。
ラヴェルもドビュッシーもフランス人だけど、本当にスペイン風の音楽が似合うね。
最後の「春のロンド」は途中に五拍子の可愛いダンスがあるけど、本当にボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」が見える様な(フランスじゃないけど(爆))繊細な春への賛歌に聞こえます。
解説したページを見て、知らなかったのだが、もともとピアノ二台と管弦楽としても着想されていたということで、そのヴァージョンも聴いてみたい(弾いてみたい)。
僕の弾く量と言えば、全体の音楽のどうだろう、5%にも満たない様な気がするけど、同じ少なさといっても、ラヴェルのボレロなんかの、「ただの倍音成分」を担当している、という感じでは無く、もちろん、Celesta特有の、FluteやHorn、Oboeと重なって一つの音を作っている部分もあるけど、そこはかとなく、数小節だけSoloっぽくなる箇所があちこちにあって、弾く量はごくわずかだけど、何というか、「Celesta冥利に尽きる」みたいな作品です。
話は飛ぶけど、この二週間くらいで、日本のヤマハのチェレスタ(8月の芥川作曲賞)と、ドイツのシードマイヤーのチェレスタ(NHKのラジオの録音)と、そして今回はフランスのミュステルのチェレスタを三種類弾き分けるのも楽しいです。

たぶん、画像が小さすぎて良く判らないと思いますが、「春のロンド」のパート譜です。
CelestaはViolinたちにくらべて弾くところが少ないので、こんな譜面が多いのです。
「こんな」とは、自分が弾き出すところまでの情報が「書いてない譜面」ということです(爆)
僕は練習番号10番(小節数と別に音楽的にまとまりのあるフレーズごとに振られている番号を意味します。だから10小節目ということではなく、数十小節、あるいは、ものによっては何百小節待たされることもあるわけです。)から演奏の準備をはじめますが、冒頭からそこまで、そこそこの間は、待っているだけで、今どこを演奏しているかを知るために本番中スコアを見るわけには行きません(爆)
こういう仕事の難しさは、演奏する音符の難しさもあるけど、ちゃんと乗り遅れないで弾くということ自体への理解と、集中力が必要なのです。
たいていの場合、直前に誰かが演奏している「ガイド」が書いてあるのでほとんど問題はないのですが、それにしたって、同じフレーズを別の場所で演奏される場合もあるわけだから、そこで勘違いすると大変なことになります。
やっぱり初めて演奏する時(今まで聴いていた曲だとしても、聴くのと弾くのとでは全然違うものなのです。)は、「今どこをやっているのか解らない」ということが一番怖いので、今回は、スコアから「曲の最初からそこまで」の休みの小節数を書き込んであります。
もちろん、拍子も変わるしテンポも変わるから、単純にカウントして数えられるものではないのですが、その不安は初日の練習ですぐに解消しましたが、やっぱり書かないよりは書いておいて良かったと思う(爆)
次からはまっさらな譜面でも自信をもって弾けるとは思うけど、こういう苦労は普段独奏や伴奏やアンサンブルのピアノの譜面にはないね。
この曲に興味を持った人は、iTunes Storeあたりで、
Debussy Image for Orchestra
で検索するとでてくると思います。
そうそう、この曲の木管楽器、オーボエのパートを注目すると、通常のオーボエに加えて、orchestraではおなじみのコーラングレ(イングリッシュホルン)、そしてあまり見かけることが多いとは言えない、前記の二つの楽器の中間の音域を担当するバロックではおなじみの、オーボエ・ダモーレも活躍します。
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