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    2020-07

    Guys and Dollsの中の異彩を放っているナンバーと言えば - 2010.04.25 Sun,00:13

    僕は作曲家の息子です。

    で、学生時代からギャラをもらう仕事をしていましたが、プロフィールに書くデビューというのは、それから10年近く経ったあと、作曲家の武満徹さんの主宰する現代音楽のフェスティバルで突如代役で弾いたことが、武満さんからも、そして音楽雑誌にもとても好意的な評判を書いてもらったのでそれにしています。

    子どもの頃も作曲家の父がいたからかもしれないが、いわゆる前述のエピソードを含め、現代音楽(この言葉がピント来なければ、いわゆる前衛的な音楽、というものを身近に触れてきたから、いわゆる、ドミソとシレソだけで成り立っている、商業音楽の中にいると物足りないものを感じることはしばしばだし、昔の歌謡曲、今のJpopのどの曲も歌えないし、みなさんが知っているアーティストの98パーセントは知らないからカラオケにまれに連れて行かれると、鉄腕アトムや鉄人28号、エイトマンやスーパージェッター、オオカミ少年ケンだったり、子どもの頃観ていたアニメしか歌えません。

    ゆえに、なぜそう思うのか判らない(それは普通の人が、これはめちゃくちゃに弾いているんでしょう?と思うようなジャンルが心地よいと育ってきてしまった感性があるからかもしれないけど)けど、Guys and Dollsの二幕の最後の方で、サラとアデレイドが出会う時に二人が融合せず(爆)、勝手に思いを独白しているのが二重唱になっている曲が、ネットで観たらぼろくそにひどい出来だから、なんとか改良できないか、と書かれているのを見たので、作曲家に対しても、そしてキャストに対しても、音楽監督、演出家に対しても、僕が反論しないと誰も反論できない(お客様の感想は不可侵の領域だとは思うから。)と思うので、そう感じちゃったお客様の感性をこけにするわけではないのですが、はっきり述べておきたいのは、曲が悪いわけでも、キャストが音をはずしているわけでも、演出家が無理難題を音楽監督とともにあの場面で要求とか失敗をしているわけでもないことはここで音楽の現場監督の僕が宣言しておきます。

    確かに商業音楽のものさしからいうと、あの曲はイントロのすばらしいトロンボーンのソロのあと、歌い出してから「ハモってない」様に聞こえるかも知れません。

    しかし、あれは全く譜面通りにやっています。

    じゃあ、作曲家が「悪い」のか?

    違います。

    あれは、それまでスカイとネイサンの様には交流の無かったサラとアデレイド(この発音は、ナイスリー役の田中ロウマ君が発している「アドレイド」の方がきっとオリジナルに近いと思うけど)が初めて直接な交流をすることになるきっかけの大事な曲です。

    それで、構造的に説明すると、それまでにお互いが独唱していた曲が完璧にコラージュされているから、ハーモニーとしては、他の曲と違い、とってもゆがんで聞こえる箇所があります。
    しかも、二人が別々の立場の歌詞を歌っているので、芝居を見ている人が「理解したい」と思う気持ちをそいでいる可能性は十分あります。

    しかし、曲を作る側から分析すると、なんでもかんでも、明晰に歌詞の内容が分かるようにすることだけを考えたら、古今東西のオペラやミュージカルの名作のほとんどが、曲を書き換えなければいけなくなるでしょう。

    合唱になったときだって、そうです。
    声部が複雑に混ざり合ったが最後、もう歌詞の内容なんて聞き取れない状態になっている名曲はいくらでもあります。

    ストーリーを追ってるのだからなんであんなことをするのかと言われたらそれは作曲家に訊くしかないけど、僕はとっても短いけど、あの曲のアイデアは本当にすばらしいと思っているのです。

    前にもどっかの記事で書いたけど、あれ(同時に二人の役者が勝手に自分の立場を独白すること)を台詞でやられたらほんとに怒りを感じるかも知れません。

    しかし、音楽に載せてああいうふうに「同時進行」で違う歌詞をまだ交流する前の二人が歌っていることがあのドラマのあの場所ではものすごく必要なのです。

    僕もミュージカルと宣言したら恥ずかしいけどそういう素材を書きました。(“ジョディと子鹿のフラッグと”
    その過程で思ったことが次のことです。

    印象的な場面でそのキャラクターの気持ちを音楽で強烈に表現することはある意味簡単だが、そればかりで全部が進むと、ドラマが必要とする対立関係やその逆であっても、単なる顔見せ歌合戦にしかならないではないかと、、。
    そういう様々な緊張関係が音楽の中に表せられなければ音楽劇にする意味がない。

    やっぱり音楽劇として様々な緊張関係を音楽的に配置するためには、それぞれの役の単なる独白がメロディーに乗っているだけではなく、同意にせよ、反発にせよ、そして無関係な関係そのものであれ、それが同時に音楽のハーモニーの中に溶けてしまったら面白いのにと思うわけです。

    Guys and Dollsでそういう場面の音楽を例としてチョイスすると、それはまず冒頭の競馬の予想のフーガが筆頭に挙げられるでしょう。
    三人のギャンブラーがそれぞれ違う馬が有力だということを主張する歌が同じ伴奏の上に時間差で表現されています。

    そして、文頭に戻るけど、境遇が極端に違う女がそれぞれ絶望感にさいなまれながら歌う重唱(まったく音楽のなかで交流は無いが)が、それそのものまったく違う曲が言葉通りコラージュされているのが圧巻なのです。

    ゆえに、あの曲がひどいできだと思っている観客の皆さん、安心してあの「ゆがみ」を楽しんで頂ければと思います。
    だから、そのあと二人が意気投合して歌う重唱のハモりと歌詞の内容の共感が効くと思います。
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    ● COMMENT ●

    トゥーランとどさんへ

    おっしゃることはまさに、僕がかつて、以下の記事に書いたことです。
    http://juninho.blog16.fc2.com/blog-entry-1135.html

    「夜のボート」は、
    http://juninho.blog16.fc2.com/blog-entry-833.html
    のコンサートで初めて弾きましたが、とても面白い曲で素敵だなと思いました。
    まあ東京じゃ絶対に僕が弾くチャンスはない曲ですから、貴重な体験でしたね(爆)

    そういう意味じゃやっぱりオペラやミュージカル、そしてストーリーのあるダンスの作品は構造が複雑であればあるほどいろんな見方ができて面白いものですね。

    確かに、あの曲のリハーサルを始めてしたときは、お二人は混乱しそうにはなっていましたが、ある意味マイペースで歌えばなんということはないので、あれはやってる方よりは聴いている方が実に難しそうに聞こえる曲なのです。

    ある意味ピアノで伴奏する方が初見の時にこんがらがりました(爆)
    だって、完全にコードがぐちょぐちょになっている瞬間(ちゃんと見ればぐちょぐちょどころか実に解りやすいものがたんに重なっているだけですが)がありましたから。

    無反応な私なのか

    あの場面では、「まったく違和感なく」気持ちは大盛り上がりでした。
    他の作品のお話を持ち出すのは、どの作品に対しても、作品を作り上げていらっしゃる皆様に対しても大変失礼になるのかもしれませんけれど、少しだけ。

    アデレイドとサラのデュエットのように、それぞれの歌が、ここまで独立した例ではないのでしょうけれど(リズムは同じリズムを刻んでいる歌もあるので)、
    レ・ミの「心は愛に溢れて」の三重唱(といっても、気持ちのベクトルの違いでいうと、”マリウス&コゼット”vsエポニーヌ)
    バルジャンとジャベールの「対決」のうた。
    エリザベート(東宝)の1幕終わりの「私だけに」の三重唱やエリザベートとフランツの気持ちのすれ違いを歌った「夜のボート」。

    ストレートプレイで同じ事をしたらきっと聞き取れない場合も、音楽にのっかることにより、別々のセリフでも、別々のメロディーでもちゃんとそれぞれに聴こえてきますし、その中で、ドンピシャでかみ合う瞬間や歌が合流したりする瞬間に鳥肌が立ったり、二人の気持ちのパワーや、相対する二人のように見えて、実は共に通じるところを耳で感じることが、いわゆる美しい和音でハモったり、一人の歌を受けて次のもう一人が歌うような流れのときよりも、3倍にも4倍にも増幅して私に届きました。
    その歌の波(二人の気持ち)に、客席で押し潰されそうになりながらも(笑)、それゆえ、舞台から目も耳も離せない状態を味わう事ができること!こういう瞬間こそが、私にとってのミュージカルであり、「同時進行」で各々が気持ちを独白するシーンが成立することこそが、"That's Musical!"だと思っています。

    音楽のことは全くわからない素人な私ですので、歌っていらっしゃるおふたり、おふたりの歌を聞き分けつつ演奏していらっしゃるバンドの皆様、よくぞ、頭(耳)が混乱しないものだ!と、七不思議のひとつに入れたい気持ちで客席に座っていました。

    残念ながら一度しか観ることは出来ませんでしたが、それでも、たくさん楽しめました。どうもありがとうございました!

    あまり残念がらないでください

    豚さん、フォローありがとうございます。

    しかし、僕はすべての人に同意を求めて発言しているわけではありません。

    逆に、あの曲を「良い」と思わない人はおかしいという理屈が醸成されることになったらそれこそ暴論になります。

    僕だって多くのみなさんが「素敵」と思っている曲や演奏家や作品について「あれの何処が良いのか全く理解不能」と思ってる事はものすごく多くあって(爆)、その意見にがっかりされても考えを改めるつもりはないし、、、(爆)

    ですから、あの曲に違和感を感じている人の気持ちはそれはそれで正しいのです。
    だってそういう感情を表現して貰っているから。

    まったく無反応なことよりよっぽど嬉しいです。

    私も…

    私もぽっぽさんと同じで 名場面だと思っていて あの二人の歌う曲想の違いを楽しんでいたのですが(ここがとくに素晴らしい、と楽しみに観に行っていました)そんな感想を言う人がいるのですか。ちょっとがっかりして落ち込みます。そういう人はたくさんミュージカルや楽曲を聴いたら考えが変わるのかな、なんとなく変わらないような気がします。人により感想はさまざまとは言っても いいところをいいと感じ取れないのは 長く修業した板前さんがだしに工夫して味わいよく作ってくれた煮物を「食べたい味ではない。」と言って食べずに箸を置いてしまうようで残念でたまりません。

    誤解のない作品は意味がないとも言えるし

    人それぞれの受け止め方があるわけで、こっちが白だと思って発信してもそれが黒に見える人は必ずいらっしゃるわけです。

    昨日、ネイサン役の錦織氏と対談したときに、ある場面での彼のちょっとしたリアクションについて僕が何に対してリアクションしているのか質問してみたことがあります。(たぶん記事には反映してない雑談のうち)

    そしたら、全く僕の想像とはかけ離れていたことに対する演技でしたが、それはそれで、僕は自分の感想を「間違えている」とは思いませんでした。

    逆に僕が演奏している音楽的な事についての様々な意図について、僕以外のセクションの人がどう受け止めているかは知りません。

    そんなものです(爆)

    ただ、それをすべて纏める演出家の人が自分の意図とあまりにかけ離れていたらそれはチェックしてくるわけで、予想と違うことが音楽的に起きていても、許容範囲の意外性であれば、喜んでくれるだろうし、自分が想像した以外の事が起きることがすべて許容できない人もいるだろうけど、これだけの人数が関わる創造作業というのは、全員同じ考えで居るはずはありません。

    ただ、それぞれのセクションが、演出家の意図、そして自分が資料、そして条件(台本、譜面、そして劇場の制約、あと、関わる人間のスキルと様々な条件から)からみたてた最善の方法を探して調和させていく結果が、幕を明けてからの毎日になるわけです。

    批判は甘んじて受けますが、こうやって言葉で発信する場所もあるわけで、ちょっと見方を変えたら、単純な誤解が解けたら嬉しいと思うこともあるわけです。

    でも誤解は思わぬ創造も産むわけで、思いが伝わらない欲求不満はあるにせよ、受け取った側が面白い誤解をしてくれることで、別の価値が生まれることもたくさんあるわけです。

    ですから、あの場面が気に入らないとおっしゃる人はそれはそれで直感は残念ながら正しいとも言えるのです。

    サッカーのチームだって、監督の戦術に全員が賛成しているとは思えないし(爆)、それは一般の会社だって同じでしょう。

    その制約の中で、みんなが理想的な戦力になろうと努力することで先に進むのです。

    世界一のレヴェルを持つようなブラジルの代表チームの姿を見ていると、ピッチ上で怒鳴り合っている姿を良く見ます。
    和を重んじる日本人からすると、「なんで仲良くやらんのだ」と思いたくなるけど、様々な個性、そして最高級のスキルを持ったアスリートがただ一点、勝利に向かって最善の方法だと思う考えを試合中にぶつけ合って結果を出しているのを見ると、上の言っていることをそのまま家来の様に実行することが最高の結果を生むとはとても思えないし、それぞれのセクションはそれぞれの専門家の集合体なのです。

    だから、同じカンパニーで芝居を作っていても常に主張のぶつかり合いはあるわけで、それは、観客と対峙したときも、同じです。
    最初にもどりますが、白だと思う人、黒だと思う人様々で、全員が一致して同じ考えになってくれるとは思ってませんから(その方がよっぽど怖い)大丈夫です。

    えっ。

    白石さま、連日お疲れさまでございます。

    サラとアデレイドの「結婚しよう」の曲ですが、”ひどい出来”なんて思ったこと一度もないのですが、思いは人それぞれですね。

    2人が勝手気ままに言っているはずなのに、笹本さんの突き抜ける高音と高橋さんの重厚感ある低音が重層的に歌われて、独り言2つがシンメトリーから共感に変化して、「私たち似たもの同士」てなるのは毎回とても満足感を感じています。

    あのお2人がお互い合わせられないわけがなく、むしろ「わざと合わせていない」ところから、心の近づきとともに自然に合っていくカタルシスを感じるのが好きです。


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    Tromboneのスライドがこんな事になってるとはスタッフも演出家も知らないだろう

    バンドの配置はこの記事でも紹介したが、Guys and Dollsのトロンボーン奏者の鍵和田名人の職人芸をお見せしよう(爆) バンドの前にある柵からは...

    Tromboneのスライドがこんな事になってるとは誰も知らないだろう «  | BLOG TOP |  » 舞台の後ろで弾くのは本当は面白くないのだけど、特権もあるわけで、

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    白石准


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    (新しい記事には極力付けるようにしていますが、全記事検索にはほど遠い状態ではあります。
    少しずつ古い記事にもtagを付けていく所存であります。
    検索しやすいように日本語でtagを付けていましたが、URLにすると、メールなどで、日本語の部分を認識してくれないことが判りましたので、今は日本語で書いた方が良いと思われる地名や固有名詞以外のものは英語に書き直していますが、勿論一辺には出来ないので同じ言葉が日本語と英語で別れているという妙な事になっていますが、追々統一したいと思います。)

    My Works

    iTunes Storeで配信されている、僕の作曲した作品です。
    両方とも宮沢賢治の物語を元に「語りと音楽」による編成で作曲されています。
    “どんぐりと山猫”については、ここ
    “セロ弾きのゴーシュ”についてはここ
    に補足説明があります。
    これらの作品の生演奏のオファーも随時ここで受け付けています。

    二つの作品のうち、“セロ弾きのゴーシュ”はこの真下の欄にあるようにCDとしてもリリースしました。

    お断り

    commentやtrackbackは記事そのものに直接関係ない(記事が取り上げていることに関連があったにせよ)と僕が判断したものは断りなしに削除させていただきますし、頻発する迷惑投稿を拒否するために認証後反映する時もありますのでご容赦。

    PhotoはものによってClickすると写真共有サイトや、そのまま大きいサイズで見ることができます。

    様々なテーマについて投稿することにより将来的には一種の白石准の百科事典のような「作品」に成長していくことを期待しています。

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