アーバイドの素性が気になる@Guys and Dollsの妄想は続く - 2010.04.20 Tue,01:04
元々、このGuys and Dollsというミュージカルは、Damon Runyonという人の複数の短編小説を組み合わせて作った話らしいので、もともとおのおののストーリーのなかでは関わりの無かった登場人物が一つのストーリーに登場する羽目になったわけで、最初から一つのストーリーの中に構想された人物像ではなく、無関係なところから関連づけられたという作り方も実に面白いなと思っているのです。
故に、最近というか、前からはまってる、一見無関係な複数のストーリーを妄想のすえ、関連づけてしまうということは自分のなかでは、たんなる読書感想文を思いつくより、他人のストーリーなのに自分が探偵になって犯人の残した手がかりと犯行の筋道との関連性を見つけた様な楽しみがあります。
まあこういう「趣味」がないと“どんぐりと山猫”や“セロ弾きのゴーシュ”とかの作曲をしようなんては思わないと思う。
タイトルのアーバイドについてのことにもどります。
このGuys and Dollsにでてくる救世軍のメンバーのうち、カートライト将軍とアーバイドは、妙に様々なことに寛大です。
カートライト将軍についてはまた別の機会に考えるとして、アーバイドの寛大さについては、この前の記事に書いたように、スカイが最初に訪ねてきたとき、風貌からあまりガラの良くない若い男が来たのに敢えてサラと二人っきりにさせてしまう不用心さがあり、そのうち二人が怒鳴りあいをしてても、出てきません。
リアルに想像すると、他の二人の救世軍の人が怒鳴り声を聴いて何が起きたかと駆けつけようとするのを止めてドアのところで聞き耳を立てていたのかも、、、。
(実際、その後、凱旋活動から戻った救世軍の人たちの前に突然カートライト将軍が現れたとき(建物の外だし)は、大声を出してないのに奧からアガサたちは駆けつけてきますからね)
しかし、他の二人が心配するなか、もっともサラに対して直接的な保護者であるアーバイドはサラとスカイの居る部屋に行くのを止めていたように思います。
なぜなら、その瞬間後で二幕で彼が歌う前に告白するとおり、スカイの下心とか、すべてを理解しているからです。
しかし、その後サラがスカイに誘われてまんまとハバナに行ってしまうわけです。
あれほど愛している祖父に何処に行くか言わずに、この孫娘、しかもあの伝導所では、たぶんリーダー的存在だから軍曹なのであるけれども、ネイサンも想像できなかったように、おしゃれをして会ったばかりのギャンブラーについて行ってしまったあとも、何事もなかったように(心配しねえのか(爆))深夜に街宣活動をして明け方に帰ってきて、しかも、伝導所の真ん前で明け方に帰ってきて堂々とキスをしている孫娘が見えて居ただろうに(爆)、「何処に行っていたのかい?」と訊いてその行き先がキューバだと知っても、「それじゃ(徹夜をした)我々より疲れとるだろう」と訳の分からない労いの言葉をかけている(爆)のがなんとも、心の広いおじいさんだと思うわけです。
この余裕はどこから出てくるのか妄想してみました。
だいたい、祖父なのにサラと名字が違う。
アーバイド・アバーナシーとサラ・ブラウン。
もしかしたらサラは孤児でアーバイドが「孫」の様に育てていたのかとも想像できちゃうし、血が繋がっていたとしても前に書いたように、名字が違うわけだから、娘の娘だったのかなとも想像できる。
病気で死んでしまったアーバイドの娘、あるいはサラの母親がいたから必死で彼が育てていたのか、、。
しかし、はっきりとサラがスカイに恋心を持っていることを理解し、同時にサラが、伝導所がネイサンたちの賭場になったことに絶望して会話するところで、サラが「私の愛する人はギャンブラーでは駄目なの!」と二度も強調して吐き捨てるように言うところは、たしかに自分の聖域である伝導所を自分が賭の対象にされ、利用されたことに対する怒りから出たものとしては、単純に理解できます。
しかしそれは国語の授業の模範解答にしかならなくて、そんな単純な読み方は面白くも何ともない。
もしかしたら、サラが自分の境遇の中に、ギャンブルに身をやつし、身を滅ぼした親がいたのではないかと想像すると、その時のアーバイドの吐露する肉親の愛情の表現(それまでは、とんちんかんなおじいさんだったのに)がより深いように感じてしまうのです。
それと、これは重箱の隅をつつくような解釈だけど、スカイは、アーバイドの事を、ちゃんと自己紹介された上で、ブラザー・アバーナシーと呼んでいます。
しかしながら、劇中では、ネイサンとアーバイドは知り合いであるかどうかは示されていないのにもかかわらず、二幕のクライマックスでもある、伝導所の場面で、ネイサンが野郎どもの罪の告白大会を始めるに当たって行儀の悪いギャンブラーたちにすごんだ後、振り返り、実におだやかに(100%観客の笑いを誘う言い方で(爆))、「ブラザー・アーバイド、続けてください」と、ファーストネームで呼んでいます。
しかも、ネイサンが終幕に、伝導所で結婚式をやらせてもらえないかと、スカイに訊くところがあるけど、彼が答える前にアーバイドが答えているところをみると、もしかしたら、ネイサンとアーバイドというのは、昔からの知り合いで、実はアーバイドはそうとう名うてのギャンブラーだったのかなと、あまりのアーバイドの余裕綽々な態度にそういう疑いも持っちゃったりします。
だから、スカイに「借用書の約束を果たすんだ、さもなければ、おまえがインチキ野郎だって町中に言いふらすぞ!」(正確かどうか今手元に台本がないから解らんがこういう感じ。借用書というのは、スカイがサラをハバナに連れて行く条件として、救世軍の伝導所に10人の罪人を連れてくるという約束のこと。)すごんじゃうところが、すっごく男らしいし、その言葉にスカイの気持ちに火が付くきっかけになっていると思うのです。
まあ、アーバイドが本当に元ギャンブラーだったとしたら、スカイに言われる前に深夜に街宣活動をしたかもしれませんから、この妄想の根拠についてはつっこまれる隙はいくらでもあるんですが。(笑)
なんかアーバイドという人がとても魅力的に見えてきました。
それを演じているすばらしいバス歌手のkumaさんとは、これで三回目の共演(2000年のThe Kitchen@地人会、2008年のBeggar's Opera、とこれ)だけど、あの印象的な独唱の最初、演出上彼は下を向いているわけで、もちろん僕の指揮も見えてないし僕も彼の息を聞こえるわけではない。
でもいつもイントロで一旦フェルマータで停まった後、歌とピアノだけで曲が再開しますが、あれがぴったり合って始まる快感というのは、劇場に居るすべての人(もちろんスタッフも)が「合ってあたりまえ」と思っているふしがありますが、あの条件でためしにやってみてください、それだけ価値のある彼と僕だけの密かな楽しみなのです(爆)
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● COMMENT ●
そうでしたか
ご明察です。
カーテンコールでキャストの方々と演奏の皆様がコンタクトしている様が、日増しにヒートアップしているのをとても嬉しく拝見しています。
今回、「サラが自分の境遇の中に、ギャンブルに身をやつし、身を滅ぼした親がいたのではないか」と書かれていますが、まさにそれそのもののエピソードが原作にあるそうで、サラを演じる笹本さんはこうめいさんからその話を聞いて、役作りの一部にしたそうです(パンフレットの対談に書かれていました)。
アーバイドの脅し文句はそれであってると思います。
話がそれましたが、素敵な演奏をまた楽しみにお邪魔します。
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ご指摘ありがとうございました。
パンフレットもらっておいてほとんど読んでなかった(爆)
カーテンコールですべてのキャストがこっちを向いたときの表情はたまりません。
あんなに瞳のきらきらした大人たちがこの世に存在するのかと思うくらいです。